そして、そんな市左衛門を支えたのは大倉孫兵衛であった。絵草紙店に生まれた孫兵衛は、「錦絵」を販売する店を営むが、市左衛門の志に感銘を受け、自店の商売一切を番頭に任せて貿易と製陶業に心血を注いだ。

そして「モリムラブラザーズ」で販売する商品の仕入れや陶磁器の製造には、錦絵の製作で培った孫兵衛の企画力や審美眼が遺憾なく発揮されアメリカでの評判を不動のものにしていった。

70歳を過ぎて、和親とともに私財を投じて設立した「大倉陶園」の設立趣意書に「良きが上にも良きものを」という言葉が残されているように、徹底した「良品主義」を孫兵衛は生涯貫いた。

そして、その精神は、子、大倉和親らが受け継ぎ、企業の礎を成し、今の森村グループへと発展していった。ちなみに、その企業は、現在のノリタケカンパニー、日本ガイシ、森村商事、TOTO、その他、と押しも押されもしない大企業へと発展している。

まさしく、先人の最初の志がどうであったかが、歴史の審判を受けているかのようだ。

東洋陶器株式会社初期の工場風景(九州小倉1924)

次回に続く!